熱中性子標準場

加速器の運転によって発生する放射線のうち、遮へいの外まで透過し易いのは中性子とガンマ線であり、これを正しく測定することが放射線管理上必要とされています。材質内の中性子は遮蔽体との散乱により速度を失い、材質の熱運動と同じ程度のエネルギーである秒速約2,200mまで減速されます。この速度を持つ中性子を「熱中性子」と呼びます。中性子測定器の校正・開発にはこの熱中性子が利用されます。熱中性子は材質内での減速により作り出すことができますが、小さい材質では中性子は十分減速されず、大きな材質では内部で吸収されやすく、複雑な分布になってしまいます。

KEKには、放射線医学総合研究所との共同研究により、250cm×190cm×190cmの国内最大級の黒鉛パイルが設置されています。黒鉛パイルは高純度の炭素からなり、中性子の吸収が少ないことから、中央に中性子源を収めることにより、中性子の減速による「熱中性子」を作り出すことができるのです。この熱中性子の分布や強度を調べることにより、標準となる熱中性子の場を作り出すことができます。この熱中性子場はKEKの放射線防護用の検出器の校正だけでなく、民間企業との共同研究による検出器の開発等に利用されています。

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KEKに設置されている、250cm×190cm×190cmと国内最大級の黒鉛パイル(放射線医学総合研究所との共同研究による)